
所属機関(活動機関・契約機関)による届出
届け出る内容、届出の必要性、届出の時期・方法
目次
1. はじめに

日本への入国や日本での在留に関する手続と言えば、なんとなく『外国人本人のみで完結するもの』というイメージがあるのではないでしょうか?
確かに、ビザの取得や在留期間更新許可申請等は、原則として『外国人本人が』在外公館(大使館・領事館)や出入国在留管理局等に出頭して手続を行うこととなるので、上述のイメージは正しいと言えます。
しかし、日本に在留する外国人に関する手続の中には、外国人本人ではない者によってされなければならない手続も存在します。
今回は、そのような手続の中の1つである、『所属機関による届出』について解説をしていきます。
ちなみに…
『所属機関』とは、簡単に言えば『在留者と雇用契約を結んだり、在留者の活動場所となっていたりする企業や学校』のことです。
『所属機関』の詳細については下記の関連記事にて解説をしていますので、そちらをご覧ください。
関連記事:ビザ・帰化関連情報 / 『在留者による』所属機関に関する届出

2. 『所属機関』が届出する項目
所属機関が届出する事項は、下記の通り、届出をすべき事由によって異なっています。
事由 | 届出事項 |
受入れの開始の場合 | ① 中長期在留者の氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地及び在留カードの番号(以下この表及び二の表において「氏名等」という。) ② 中長期在留者の受入れを開始した年月日 ③ 中長期在留者が行う活動の内容 |
受入れの終了の場合 | ① 中長期在留者の氏名等 ② 中長期在留者の受入れを終了した年月日 |

3. 『所属機関による届出』は義務なのか?

まず結論から申し上げると、『所属機関による届出』は、入管法においては義務としては規定されておらず、あくまでも『努力義務』として規定されているに過ぎません。
しかし、入管法においては義務として規定されていないだけであって、雇用対策法28条1項においては、同様の届出が『事業者に対する』法的義務として規定されています。
また、後述するように届出をすることによって外国人が享受できるメリットも存在します。
上記の事情により、基本的には届出をすることが推奨されます。
ちなみに…
『雇用対策法28条1項による届出』は厚生労働大臣に対してするものです。
厚生労働大臣に対して提出した届出に関する情報は、求めがあった場合には法務大臣や出入国在留管理庁長官に提供されることになっています。

4. 届出の詳細

それでは、ここからは届出に関する具体的な解説を進めていきます。
4-1. 届出をすべき所属機関
上述した通り、所属機関とは『在留者と雇用契約を結んだり、在留者の活動場所となっていたりする機関』のことですが、より詳細には下記のような説明となります。
入管法別表第1の在留資格のうち、「教授」、「高度専門職」、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「企業内転勤」、「介護」、「興行」、「技能」、「留学」又は「研修」をもって在留する中長期在留者を受け入れている機関。
ただし、雇用対策法28条1項による届出をしなければならない事業者を除く。
ちなみに…
『3. 『所属機関による届出』は義務なのか?』にて上述した通り、外国人の受入れと受入れの終了の届出は雇用対策法28条1項にて事業者に対する義務として規定されています。
つまり、上記のただし書きは、事業者に対して義務を免除するためではなく、2重に義務が課されないようにするために付されているものということになります。
4-2. 届出の時期
所属機関による届出は、外国人の受入れの開始又は受入れの終了が生じた日から14日以内に行います。
4-3. 届出の方法
所属機関による届出は、下記の事項を記載した書面を地方出入国在留管理局に提出することによって行います。
事由 | 届出事項 |
受入れの開始 | ① 中長期在留者の氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地及び在留カードの番号(以下「氏名等」という。) ② 中長期在留者の受入れを開始した年月日 ③ 中長期在留者が行う活動の内容 |
受入れの終了 | ① 中長期在留者の氏名等 ② 中長期在留者の受入れを終了した年月日 |
所属機関による届出において使用すべき様式(フォーマット)については関連法令で言及されていませんが、出入国在留管理庁のウェブサイトで参考用フォーマットが公開されています。
外部リンク:中長期在留者の受入れに関する届出 届出参考様式2の1
ちなみに…
所属機関による届出は、出入国管理局に出頭して提出する以外に、郵送によって行うことも可能です。

5. 届出をしないことによるデメリット

所属機関の届出は、上述した通り義務ではないので、仮にしなかったとしても罰則はありません。
しかし、届出をしない機関に所属している外国人については、在留期間更新許可申請等の申請の際に所属機関との関係について確認が行われるなど、より慎重に審査されることとなります。
このことは、出入国在留管理庁のウェブサイトでも明言されています。
審査が慎重に行われるということは、つまりは届出をしていた場合よりも申請が通るまでに時間が掛かってしまったり、最悪の場合、本来は許可されたかもしれない申請が拒否されるという結果になってしまったりする可能性も無くはないということです。
また、上述した通り、『事業者』である所属機関による届出は入管法では義務として規定されていませんが、一方で雇用対策法では義務として規定されているので注意が必要です。
ちなみに…
雇用対策法28条に規定されている事業者による届出の義務を怠り、又は虚偽の届出をした場合には、罰金刑が適用されます。

6. まとめ
今回は『所属機関による届出』について解説をしました。
上述した通り、所属機関の届出は入管法では義務として規定されていません。
しかし、届出をしておけば、所属する外国人が諸審査を受ける際に余計な時間や手間を省くことができる可能性もありますし、何よりも事業者の場合は雇用対策法では届出が義務付けられています。
これらの事情を勘案すれば、所属機関による届出は『しなくてはならないものだ』と認識しておいた方が無難であると言えるでしょう。
このページをご覧になって疑問に思ったことやもっと詳細に解説してほしいこと等がございましたら、ぜひお問い合わせをお願い致します。
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