特定技能ビザ|特定産業分野と従事可能な業務
「特定技能」とはどのようなビザ?
特定技能ビザとは、特定の14の産業分野(特定産業分野)での深刻な人手不足を補う目的で、2019年から新たに導入されたビザ(在留資格)のことです。
日本には数多くの種類のビザが存在します。しかし、その中でもいわゆる単純労働(ホワイトカラーの方がするような仕事以外の仕事)に従事することができるビザは限られています。
特定技能ビザを有している外国人は、上述した特定産業分野に限ってとはなりますが、単純労働に従事することが許されており、現場を支える重要な労働力として多くの企業の事業に貢献しています。
「特定技能」と「技能実習」の違い
「特定技能」とは別に、「技能実習」という似たような名称のビザ(在留資格)が存在します。
両者は名前こそ似ていますが、中身は全く異なります。
まず着目すべきは、「特定技能」ビザと「技能実習」ビザのそれぞれの目的です。
「特定技能」は上記の通り、特定産業分野における人手不足の解消を主な目的とするビザです。
これに対して、「技能実習」は、外国人の方々が日本の企業での実習を通して技術等を学び、その学んだ技術等を本国で生かすためのビザなのです。
つまり、「特定技能」は外国人の方々に日本で働いてもらうためのビザであり、「技能実習」は外国人の方々に日本で実習・研修を受けてもらうためのビザであるということです。
上記のことから、労働力として外国人を雇用したい場合には、「技能実習」は適当な選択肢ではないと言えます。
「技能実習」ビザの目的は、『外国人に教えること』であり、『働いてもらうこと』ではありません。この原則を無視して技能実習生に業務を任せた場合、不法就労助長罪に問われ、刑事罰が科せられる可能性があります。
特定産業分野と特定技能外国人が従事できる業務
特定技能外国人は、次の14の特定産業分野において就労活動に従事することが許されています。
- 介護分野
- ビルクリーニング分野
- 素形材産業分野
- 電気・電子情報関係産業分野
- 建設分野
- 造船・舶用工業分野
- 自動車整備分野
- 航空分野
- 宿泊分野
- 農業分野
- 漁業分野
- 飲食料品製造業分野
- 外食産業分野
ここで注意しなければならないことが一点あります。それは、特定技能外国人が上記の特定産業分野に該当する企業に所属しているとしても、あらゆる業務に従事することができるわけではないということです。
特定技能外国人が従事できる業務は、特定産業分野ごとに次の通り定められています(分野名をクリックすると詳細が表示されます)。
介護分野
- 身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)
ビルクリーニング分野
- 建築物内部の清掃
素形材産業分野
- 鋳造
- 鍛造
- ダイカスト
- 機械加工
- 金属プレス加工
- 工場板金
- めっき
- アルミニウム陽極酸化処理
- 仕上げ
- 機械検査
- 機械保全
- 塗装
- 溶接
産業機械製造業分野
- 鋳造
- 鍛造
- ダイカスト
- 機械加工
- 塗装
- 鉄工
- 電子機器組立て
- 電気機器組立て
- プリント配線板製造
- プラスチック成形
- 金属プレス加工
- 溶接
- 工場板金
- めっき
- 仕上げ
- 機械検査
- 機械保全
- 工業包装
電気・電子情報関係産業分野
- 機械加工
- 金属プレス加工
- 工場板金
- めっき
- 仕上げ
- 機械保全
- 電子機器組立て
- 電気機器組立て
- プリント配線板製造
- プラスチック成形
- 塗装
- 溶接
- 工業包装
建設分野
- 型枠施工
- 左官
- コンクリート圧送
- トンネル推進工
- 建設機械施工
- 土工
- 屋根ふき
- 電気通信
- 鉄筋施工
- 鉄筋継手
- 内装仕上げ/表装
造船・舶用工業分野
- 溶接
- 塗装
- 鉄工
- 仕上げ
- 機械加工
- 電気機器組立て
自動車整備分野
- 自動車の日常点検整備、定期点検整備、分解整備
航空分野
- 空港グランドハンドリング(地上走行支援業務、手荷物・貨物取扱業務等)
- 航空機整備(機体、装備品等の整備業務等)
宿泊分野
- フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供
農業分野
- 耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等)
- 畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等)
漁業分野
- 漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等)・養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理・収獲(穫)・処理、安全衛生の確保等)
飲食料品製造業分野
- 飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生
外食産業分野
- 外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)
このように特定技能外国人が従事できる業務は限定されているので、例えば介護分野の特定技能外国人の方に顧客管理の仕事も任せるといったようなことはできないということになります。
しかしながら、特定技能外国人に任せることができる業務はいずれも専門性が必要とされる現場作業なので、特定技能制度を上手く活用できれば、職場の生産性向上や人手不足の解消に繋がる可能性が高いと言えるでしょう。
ちなみに…
上記の通り、特定産業分野ごとに特定技能外国人が従事できる業務が定められていますが、どの業務に従事できるかは特定技能外国人ごとに異なります。
「特定技能」ビザを得るためには、業務ごとに設けられた試験に合格する必要があり、特定技能外国人は自身が合格した試験に係る業務のみに従事することができます。
例えば、建設分野の左官に係る試験に合格して日本の企業に就職した特定技能外国人は、同じ建設分野の業務である土工に従事することはできません。
特定技能外国人の人数推移
2022年3月末現在、約65,000人の特定技能外国人が日本国内で活躍しています(出典:出入国在留管理庁『特定技能1号在留外国人数』)。
2020年3月末現在の人数である約4,000人と比較すると、特定技能外国人の人数はたったの2年間(しかもコロナ禍)で約16倍にまで急増しています。
また、出入国在留管理庁は、特定技能制度が導入された2019年以後の5年間で特定技能外国人を約350,000人受け入れるという目標値を設定しています。
このような状況から、今後も特定技能外国人の人数は増え続け、特定産業分野の企業における人手不足問題も徐々に解消されていくことが予想されます。