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「技術・人文知識・国際業務」の3つの類型と業務内容

従事する業務の内容 / 許可事例

「技術・人文知識・国際業務」ビザとは?

「技術・人文知識・国際業務」ビザは、数ある就労ビザ(就労系在留資格)の中で最も人数が多いメジャーなビザです(2021年末時点で、その人数は約28万人です)。

時々耳にすることのある『ぎじんこく』という言葉は、「技術・人文知識・国際業務」を省略した名称です。

「技術・人文知識・国際業務」ビザを有している外国人の多くは、大学や短期大学等を卒業した方々で、日本の企業に就職した後はいわゆるホワイトカラー労働者が従事する単純労働ではない業務を担当することとなります。

「技術・人文知識・国際業務」の3つの類型

「技術・人文知識・国際業務」ビザは、その名の通り次の3つの類型からなる在留資格です。

外国人が従事しようとする仕事の内容に応じて上記の3類型のどれに該当することとなるかが決定します。

なお、該当する類型によって、ビザ(在留資格)を得るための要件も異なってきます。

以下、これら3つの類型において従事できる仕事の内容について解説します。

ちなみに…

「技術・人文知識・国際業務」は、元々は「技術」と「人文知識・国際業務」という2つの在留資格に別れていました。
2014年にそれらが統合され、「技術・人文知識・国際業務」という1つの在留資格になりました。

「技術」類型

プログラマー

「技術」類型の業務内容

「技術」類型とは、簡単に言えば理科系の非単純労働に従事できる「技術・人文知識・国際業務」の中の一類型です。

より詳細には、「技術」類型の外国人が従事できる活動は、入管法の別表にて下記のように規定されています。

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務

参考:出入国管理及び難民認定法

ここに言う『自然科学の分野』の代表的なものとして、次のものが挙げられます。

数理科学、物理化学、化学、生物科学、人類学、地質科学、地理学、地球物理学、科学教育、統計学、情報学、核科学、基礎工学、応用物理学、機械工学、電気工学、電子工学、情報工学、土木工学、建築学、金属工学、応用化学、資源開発工学、造船学、計測・制御工学、化学工学、航空宇宙工学、原子力工学、経営工学、農学、農芸化学、林学、水産学、農業経済学、農業工学、畜産学、獣医学、蚕糸学、家政学、地域農学、農業総合科学、生理科学、病理科学、内科系科学、外科系科学、社会医学、歯科学、薬科学
(出典:出入国在留管理庁『入国・在留審査要領』)

上記は代表例であり、自然科学の分野がこれに限られるわけではありません。

「技術」類型の外国人は、上記のような分野の技術や知識が必要とされる業務に従事することとなります。

「技術」類型の業務内容として許可された実例

次に、実際に「技術」類型で「技術・人文知識・国際業務」ビザの許可申請を行い、許可された仕事内容の実例を紹介します。

  • 母国で工学を専攻して大学を卒業した後に、オンラインゲームの開発に関するシステム設計、総合試験及び検査等の業務に従事したケース。

  • 母国で工学を専攻して大学を卒業した後、ソフトウェア会社と契約を結び、、ソフトウェアエンジニアとしてコンピュータ関連サービスに従事したケース。

  • 母国で電気通信工学を専攻して大学を卒業した後、電気通信設備工事業を行う会社と契約を結び、プログラマーとして、開発に係るソフトウェアについて顧客との使用の調整及び仕様書の作成等の業務に従事したケース。

  • 母国で機械工学を専攻して大学を卒業した後、日本の人材派遣会社との契約に基づき、日本の外資系自動車メーカーに派遣されて技術開発等に係るプロジェクトマネージャーとしての業務に従事したケース。

  • 母国で工学、情報処理等を専攻して大学を卒業した後、日本の外資系証券会社と契約を結び、取引レポート、損益データベース等の構築に係る業務に従事したケース。

  • 建築工学を専攻して日本の大学を卒業した後、日本の建設会社と契約を結び、建設技術の基礎及び応用研究、国内外の建設事情調査等の業務に従事したケース。

  • 社会基盤工学を専攻して日本の大学院博士課程を修了した後、日本の土木・建設コンサルタント会社と契約を結び、土木及び建築における研究開発・解析・構造設計に係る業務に従事したケース。

  • 母国で電気力学、工学等を専攻して大学を卒業した後、日本の航空機整備会社と契約を結び、CAD及びCAEのシステム解析、テクニカルサポート及び開発業務に従事したケース。

  • 電子情報学を専攻して日本の大学院博士課程を修了した後、日本の電気通信事業会社と契約を結び、同社の研究所において情報セキュリティプロジェクトに関する業務に従事したケース。

(参考文献:出入国在留管理庁『「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について』)

「人文知識」類型

グラフ_電球

「人文知識」類型の業務内容

「人文知識」類型とは、簡単に言えば文化系の非単純労働に従事できる「技術・人文知識・国際業務」の中の一類型です。

より詳細には、「人文知識」類型の外国人が従事できる活動は、入管法の別表にて下記のように規定されています。

本邦の公私の機関との契約に基づいて行う法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務

参考:出入国管理及び難民認定法

ここに言う『人文科学の分野』の代表的なものとして、次のものが挙げられます。

語学、文学、哲学、教育学(体育学を含む)、心理学、社会学、歴史学、地域研究、基礎法学、公法学、国際関係法学、民事法学、刑事法学、社会法学、政治学、経済理論、経済政策、国際経済、経済紙、財政学・金融論、商学、経営学、会計学、経済統計学
(出典:出入国在留管理庁『入国・在留審査要領』)

上記は代表例であり、人文科学の分野がこれに限られるわけではありません。

「人文知識」類型の外国人は、上記のような分野の技術や知識が必要とされる業務に従事することとなります。

「人文知識」類型の業務内容として許可された実例

次に、実際に「人文知識」類型で「技術・人文知識・国際業務」ビザの許可申請を行い、許可された仕事内容の実例を紹介します。

  • 経営学を専攻して母国の大学院修士課程を修了した後、日本の海運会社と契約を結び、外国船舶の用船・運航業務のほか、社員の教育指導を行うなどの業務に従事したケース。

  • 母国において会計学を専攻して大学を卒業した後、日本のコンピュータ関連・情報処理会社と契約を結び、同社の海外事業本部において母国の会社との貿易等に係る会計業務に従事したケース。

  • 母国において経営学を専攻して大学を卒業した後、日本のIT関連企業と契約を結び、母国のIT関連企業との業務取引等におけるコンサルタント業務に従事したケース。

  • 母国において経済学、国際関係学を専攻して大学を卒業した後、日本の自動車メーカーと契約を結び、母国と日本との間のマーケティング支援業務として、市場、ユーザー、自動車輸入動向の調査実施及び自動車の販売管理・需給管理、現地販売店との連携強化等に係る業務に従事したケース。

  • 法学部を卒業した者が、法律事務所と契約を結び、弁護士補助業務に従事したケース。

  • 国際ビジネス学科において、観光概論、ホテル演習、料飲実習、フードサービス論、リテールマーケティング、簿記、ビジネスマナー等を履修した者が、飲食店経営会社の本社事業開発室において、アルバイトスタッフの採用、教育、入社説明資料の作成を行ったケース。

(参考文献:出入国在留管理庁『「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について』)

「国際業務」類型

世界地図_人形

「国際業務」類型の業務内容

「国際業務」類型とは、簡単に言えば日本人にはない外国人特有の感覚や考え方を必要とする業務(単純労働を除く)に従事できる「技術・人文知識・国際業務」の中の一類型です。

より詳細には、「国際業務」類型の外国人が従事できる活動は、入管法の別表にて下記のように規定されています。

外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務

参考:出入国管理及び難民認定法

ここに言う『外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務』には、より具体的に言えば次のようなものが該当します。

翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務
(出典:出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(通称『上陸許可基準』))

上記は代表例であり、外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務がこれに限られるわけではありません。

関連記事:在留資格該当性・上陸許可基準適合性とは? – 入国の条件、在留資格ごとの該当性・適合性を解説

「国際業務」類型の業務内容として許可された実例

次に、実際に「国際業務」類型で「技術・人文知識・国際業務」ビザの許可申請を行い、許可された仕事内容の実例を紹介します。

  • 母国の大学を卒業した後、日本の語学学校と契約を結び、語学教師としての業務に従事したケース。

  • 母国において経営学を専攻して大学を卒業した後、日本の食料品・雑貨等輸入・販売会社と契約を結び、母国との取引業務における通訳・翻訳業務に従事したケース。

  • 経営学部を卒業した者が、コンピュータ関連サービスを業務内容とする企業と契約を結び、翻訳・通訳に関する業務に従事したケース。

  • 教育学部を卒業した者が、語学指導を業務内容とする企業と契約を結び、英会話講師業務に従事したケース。

  • 経営学を専攻して日本の大学を卒業し、日本の航空会社と契約を結び、国際線の客室乗務員として、緊急事態対応・保安業務のほか、乗客に対する母国語、英語、日本語を使用した通訳・案内等を行い、社員研修等において語学指導などの業務に従事したケース。

  • 翻訳・通訳学科において、通訳概論、言語学、通訳演習、通訳実務、翻訳技法等を専攻科目として履修した者が、出版社において出版物の翻訳を行うとして申請があったケース。

  • 国際教養学科において、卒業単位が70単位であるところ、経営学、経済学、会計学等のほか、日本語、英語、ビジネス文書、ビジネスコミュニケーション等文章表現等の取得単位が合計30単位認定されており、日本語能力試験N1に合格している者が、渉外調整の際の通訳を行うとして申請があったケース。

(参考文献:出入国在留管理庁『「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について』)

在留期間

「技術・人文知識・国際業務」ビザの在留期間については、ビザの取得・変更・更新(延長)の際に、5年、3年、1年または3か月のいずれかの期間が付与されます。

要件・必要書類

要件・必要書類については、下記のリンクの記事をご覧ください。

関連記事:「技術・人文知識・国際業務」のビザ取得要件
関連記事:「技術・人文知識・国際業務」の必要書類と所属機関のカテゴリー

よくある質問

Q. 「技術・人文知識・国際業務」ビザを持っていますが、転職する予定です。ビザを変更する必要はありますか?

A. 必ずしもビザ(在留資格)を変更しなければならないわけではありません。

転職先で従事する業務が「技術・人文知識・国際業務」ビザに該当する内容である場合は、ビザ(在留資格)を変更する必要はありません。

対して、業務内容が「技術・人文知識・国際業務」に該当しない場合は、新たに従事する業務内容に該当した就労ビザ(就労系在留資格)に変更する必要があります。

Q. 「技術・人文知識・国際業務」ビザで働いています。会社の雑務等の単純労働をしても違法ではありませんか?

A. 単純労働の比率が、メイン業務に対して微小である場合は問題にはならないことが多いです。

例えば、1日の労働時間8時間の内の1時間程度のみ書類の整理やオフィスの清掃に従事しているような場合は、問題にならないと考えて良いかと思われます。

また、「技術・人文知識・国際業務」外国人が就職して間もない頃の研修期間の一定の期間のみ現場作業を体験させる等という、正当な理由があり尚且つ期間が限定されている場合も問題にはならないものと思われます。

Q. 「技術・人文知識・国際業務」ビザを持っていますが、近々退職する予定です。どのようなビザの手続をすればいいですか?

A. 退職し、尚且つ「技術・人文知識・国際業務」に適合する業務への従事を目的として他の会社に転職等しない場合、ビザ(在留資格)を変更しなければなりません。

なお、退職したのに「技術・人文知識・国際業務」から他のビザ(在留資格)へと変更を行わずに3か月が経過すると、次の条文の通りビザ(在留資格)が取り消されてしまいます。

入管法第24条の4 在留資格の取消し

次の各号に掲げるいずれかの事実が判明したときは、(中略)在留資格を取り消すことができる。

(中略)

第6号:在留資格をもつて在留する者が、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動を継続して三月(中略)以上行わないで在留していること

参考:出入国管理及び難民認定法

Q. 「技術・人文知識・国際業務」ビザで働いています。副業としてアルバイトをしたいのですが、可能ですか?

A. 資格外活動許可を受ければ副業をすることも可能です。

ただし、副業に従事できるのは原則として週28時間までです。

関連記事:資格外活動許可申請 – 要件、必要書類、罰則、労働時間の上限

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